M'ricyyyy

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More,for

「チョコぉ?」
「そうです、チョコですよぉ」

2月14日、俗に云うバレンタインデー。
どうりで世間の皆さんは浮足立ってるわけだ。
この日の思い出といえば、チョコレートの類を貰ったりというのではなく、出夢から熱烈なキスをうけそうになった消し去りたいくらい苦いものだ。

「折角のバレンタインデーなんですから、お菓子の一つくらい作って渡したらどうですかぁ? って、可愛い妹からの提案です」
「もしかしてそれ、俺に言ってるのか?」

お菓子を作って好きな相手に渡す、なんて製菓メーカーの陰謀たる習慣に踊らされる並の可愛さの妹の瑣末な意見は、この際ばっさりと切り捨てることにする。

「なぁ伊織ちゃん。今の俺達の経済的状況を言ってみてくれ」
「お金の話なんてブラックなのは止めましょうよ」
「これが全く全然驚くべき程にブラックじゃないんだぜ。ぱっと財布を見てみろ。中身はほとんどない、つまり俺達は金銭の危機、いわば生存の危機だ」

所謂じり貧。最近の生活の質素さを見ていながら、伊織ちゃんは家計の心配などしていなかったらしい。

「人識くん、愛はお金では買えませんよ」
「会話を成り立たせろ!」
「分かりました、伊織ちゃんがお金を稼ぎましょう。そしたら人識くんだって、チョコ作れますよね」

……かなり嫌な予感がする。おまけに悪寒つきで。
伊織ちゃんが普通の金稼ぎなんて出来るわけがない。だからといって何の仕事が出来るかと聞かれたら、多分何も出来ない。
一体全体、これから何が起きるか、予想も予測もできない。



「で、結局お前はぼくの為に何も用意してくれなかったんだね」

2月15日。所詮ただの平日。
伊織ちゃんは確かに金を持ってきてくれた。出所が不明なのは多少気になったけど。
それでも、最終的に俺は何も作りはしなかった。甘いものは自分が食べるに限る。

何故いーたんがいるのか?伊織ちゃんに鳩尾ヒットされて、目がさめたらいた、それだけだ。

「ははは、まあ、ちょっと家計が苦しくてな」
骨董アパート2階、いーたんの居住区にて。
「別に期待はしてなかったけどね。だからぼくがチョコを作ってみたんだ」
「え、いーたんが!?」
部屋の隅っこにあったシンプルな包みを引き寄せて、そのまま差し出された。
いーたんがお菓子を作るだけで驚きなのに、ラッピングまでしてあるなんて、天地はひっくり返るのか、とうとう。

「ありがとうないーたん、感謝で胸がいっぱいだぜ」
「誰もあげるとは言ってないんだけど?」

当たり前のように手を伸ばすと、それはふいとよけられてしまった。
……。甘いものは食べるに限る。
お菓子のおあずけなんてのは、甘党にとって(少なくとも俺にとっては)ご法度だ。

「じゃあいーたん、それを俺に渡さずにどうするって言うんだ、是非聞きたいね」
「そうだね……。お前が何かプレゼントを用意してくれるっていうなら話は別だけど、」
「はぁ!? 誰がそんなもん…」

「そうか、交渉決裂だな」

よいしょ、といーたんが腰を上げるとほぼ同じくらいに、俺は床に押し倒された。
「仕方ない、まだ昼だけど。今日一日をお前の為に使うよ、人識」

突然名前を呼ばれたことに、体がびくっと反応する。零崎とは呼ばれても、名前なんて行為の最中くらいにしか出てこないから、なんか新鮮……。
いや、待て。俺、もしかしてピンチか?

いつの間にか腕をひとまとめにされて頭上に固定されている。
空いた片手で、いーたんは器用にチョコの包みを開けていた。

「まさかとは思うけど、いーたん、それで何するつもりなんだ?」
「何って、もう分かってるんだろ? たまにはアブノーマルもいいんじゃないかと思って。ぼくなりの配慮だよ、いつも同じじゃ面白くないだろ」

予想的中、昨日の悪寒もまるっきり的中。
「これ以上焦らしても可哀相だから、はじめようか」

にやりと笑ういーたんは、まるで悪魔。

「ちょ、タンマああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」


俺の絶叫は、新しいアパートの壁に飲み込まれた。



*END

↓おまけ
伊「今頃、人識くんはいちゃらぶしてるんでしょうかねぇ」
友「多分そーだろーね。ぜろりんをひたすら喘がせるの、1週間と7時間32分前からいーたん楽しみにしてたから」
伊「人識くんを売り渡そう作戦、見事成功ですねー」
友「僕様ちゃんたちは普通にチョコ食べよっか」
伊「そうですねぇ、マニアックプレイなんかに使うなんて勿体ないですよぉ」
友「ではでは、」

「「いただきまーす!」」


俗に言ってみればチョコレートプレi
いーたんは人識を虐めたおしたいだけのただのSでした。(爆
バレンタイン小説……1日遅れてしまいましたが、書けて良かったです。 ハッピーバレンタイーン!

2012/02/15

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