M'ricyyyy

photo::cider / design::sein


Sacred

寒いような、暑いような。
春と夏の間である、非常に中途半端な時期。本来住み着いている者なら兎も角、観光客はその地の気候に直ぐには馴染めない。
(ったく、なんで日本全国でも気温差があるんだよ…いい迷惑だっつの)
脱色された白の髪に、右頬の刺青という(一方だけでも)目立つ組み合わせの容姿をした少年―零崎人識はそっと心の中で悪態吐きながらも、ひたすらに、ただひたすらにとある場所を目指して足を進めていた。
がさがさと、提げたビニル袋を揺らしながら。
***
ぎしりと軋む音は、ほんのチャイム代わりにもなる。
「待たせたな」
既にセルフサービスと化した扉から、ひょこりと白が姿を現した。
おかえり、と 簡潔に返事をし、部屋の主戯言遣いもといいーちゃんはビニル袋を受け取り中身を床へぶちまけた。
「いや、流石に雑だろ」
「割れなければ構わないさ」
人識の苦笑もお構いなしに、ぶちまけたものを丁寧に確認していく。
「なあ、零崎」
「んあ?」
「ぼくは確か鴨鍋が食べたいって言ったよね」
「おう」
「じゃあ何だこれは」
目前に突き出されたのは、特徴的な赤色の、“キムチ鍋の素”。
「どこに鴨鍋のベースをキムチにする奴がいるんだよ」
「案外美味しいかも、と思ったんだよ」
「嫌がらせだろ」
「いいじゃん、俺も食べるんだしさ」
かはは、と笑う人識に、いーちゃんは既に呆れ返ってものも言えなかった。


その日、ふたりは仲良く鴨鍋キムチ味を楽しんだようです。
end.


あとがき+
久々の版権小説どっきどきです。それはそうと今日は記念日ですよ皆さん!←
この日だけは逃すまい、と気合の所業で書き上げました…。河川敷→鴨川→鴨鍋、のノリです。
もはや人識くんがただのパシリですね。
おめでとう5月13日

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